くぎり符号の使ひ方

本省で編集または作成する各種の教科書・文書などの国語の表記法を統一し、その基準を示すために、

一、送りがなのつけ方（案）
二、くぎり符号の使ひ方〔句読法〕（案）
三、くりかへし符号の使ひ方〔をどり字法〕（案）
四、外国の地名・人名の書き方（案）

の四編を印刷に付した。この案はその一つである。

諸官庁をはじめ一般社会の用字上の参考ともなれば幸である。

まへがき

この案は、明治三十九年二月文部省大臣官房調査課草案の句読法（案）を骨子とし、これを拡充してあらたに現代口語文に適する大体の基準を定めたものである。
くぎり符号は、文脈をあきらかにして文の読解を正しくかつ容易ならしめようとするものである。
くぎり符号は、左のごとき約二十種の中から、その文の内容と文体とに応じて適当に用ひる。
1. 主として縦書きに用ひるもの
  1. マル（句点）。
  2. テン（読点）、
  3. ナカテン・
  4. ナカセン ── 又は ─
  5. テンテン …… 又は …
    テンセン ………
  6. カギ「」
    フタヘカギ『』
  7. カッコ（）
    ヨコガッコ（）
    以下補助的なもの
  8. ツナギ =
    ツナギテン -
  9. ワキテン、、、
  10. ワキセン _____
  11. 疑問符？
  12. 感嘆符！
2. もつぱら横書きに用ひるもの
  1. ピリオド（トメテン）．
  2. コンマ，
  3. コロン（カサネテン）：
  4. セミコロン（テンコンマ）；
  5. 引用符（カコミ）《》（）
    以下補助的なもの
  6. ハイフン（ツナギ） ‐
  7. 半ガッコ）
  右、各種の符号の呼び名は、その一部は在来のもので一部は取扱上の便宜のためにあらたに定めたものである。
くぎり符号の適用は一種の修辞でもあるから、文の論理的なすぢみちを乱さない範囲内で自由に加減し、あるひはこの案を参考として更に他の符号を使つてもよい。
なほ、読者の年齡や知識の程度に応じて、その適用について手心を加へるべきである。

（一）主として縦書きに用ひるもの
呼び名	符号	準則	用例
(1) マル	。	マルは文の終止にうつ。正序（例１）倒置（例２）述語省略（例３）など、その他、すべて文の終止にうつ。「」（カギ）の中でも文の終止にはうつ（例４）。引用語にはうたない（例５）。引用語の内容が文の形式をなしてゐても簡単なものにはうたない（例６）。文の終止で、カッコをへだてゝうつことがある（例７）。付記的な一節を全部カッコでかこむ場合には、もちろんその中にマルが入る（例８）。	春が来た。出た、出た、月が。どうぞ、こちらへ。「どちらへ。」「上野まで。」これが有名な「月光の曲」です。「気をつけ」の姿勢でジーッと注目する。このことは、すでに第三章で説明した（57頁参照）。それには応永三年云々の識語がある。（この識語のことについては後に詳しく述べる。）
(2) テン	、	テンは、第一の原則として文の中止にうつ（例１）。終止の形をとつてゐても、その文意が続く場合にはテンをうつ（例２３）。たゞし、他のテンとのつり合ひ上、この場合にマルをうつこともある（例４）。〔附記〕この項のテンは、言はゞ終止符ともいふべきものであるから、将来、特別の符号（例へば「《シロテン》」のごときもの）が広く行はれるやうになることは望ましい。用例の〔参照一〕は本則によるもの。また〔参照二〕は「《シロテン》」を使つてみたもの。テンは、第二の原則として、副詞的語句の前後にうつ（例５６７）。その上で、口調の上から不必要のものを消すのである（例５における_（、）のごときもの）。〔附記〕この項の趣旨は、テンではさんだ語句を飛ばして読んでみても、一応、文脈が通るやうにうつのである。これがテンの打ち方における最も重要な、一ばん多く使はれる原則であつて、この原則の範囲内で、それぞれの文に従ひ適当に調節するのである（例８９ 10 11）。なほ、接続詞、感嘆詞、また、呼びかけや返事の「はい」「いゝえ」など、すべて副詞的語句の中に入る（例12 13 14 15 16 17 18）。形容詞的語句が重なる場合にも、前項の原則に準じてテンをうつ（例19 20）。右の場合、第一の形容詞的語句の下だけにうつてよいことがある（例21 22）。語なり、意味なりが付着して、読み誤る恐れがある場合にうつ（例23 24 25 26）。テンは読みの間《ま》をあらはす（例26 参照 27）。提示した語の下にうつ（例28 29）。ナカテンと同じ役目に用ひるが（例30）、特にテンでなくては、かへつて読み誤り易い場合がある（例31）。対話または引用文のカギの前にうつ（例32）。対話または引用文の後を「と」で受けて、その下にテンをうつのに二つの場合がある（例33 34 35）。「といつて、」「と思つて、」などの「と」にはうたない。「と、花子さんは」といふやうに、その「と」の下に主格や、または他の語が来る場合にはうつのである。並列の「と」「も」をともなつて主語が重なる場合には原則としてうつが、必要でない限りは省略する（例36 37 38 39）。数字の位取りにうつ（例40 41 42）。〔附記〕現行の簿記法では例40 41のごとくうつが、わが国の計数法によれば、例41は42のごとくうつのが自然である。	父も喜び、母も喜んだ。父も喜んだ、母も喜んだ。クリモキマシタ、ハチモキマシタ、ウスモキマシタ。この真心が天に通じ、人の心をも動かしたのであらう。彼の事業はやうやく村人の間に理解されはじめた。〔参照一〕この真心が天に通じ、人の心をも動かしたのであらう。彼の事業は…… 〔参照二〕この真心が天に通じ、人の心をも動かしたのであらう彼の事業は…… 昨夜、帰宅以来、お尋ねの件について_（、）当時の日誌を調べて見ましたところ、やはり_（、）そのとき申し上げた通りでありました。お寺の小僧になつて間もない頃、ある日、をしやうさんから大そうしかられました。ワタクシハ、オニガシマヘ、オニタイジニイキマスカラ、私は反対です。私は、反対です。しかし私は、しかし、私は…… 今、一例として、次の事実を報告する。また、私は…… たゞ、例外として、たゞし、汽車区間を除く。おや、いらつしゃい。坊や、お出で。はい、さうです。くじやくは、長い、美しい尾をあふぎのようにひろげました。静かな、明るい、高原の春です。まだ火のよく通らない、生のでんぷん粒のあるくず湯を飲んで、村はづれにある、うち雜木山を開墾しはじめてから、彈き終わつて、ベートーベンは、つと立ちあがつた。よく晴れた夜、空を仰ぐと、実はその、外でもありませんが、「かん、かん、かん。」「かん。」秋祭、それは村人にとつて最も楽しい日です。香具《かぐ》山・畝火《うねび》山・耳梨《みゝなし》山、これを大和の三山といふ。まつ、すぎ、ひのき、けやきなど天地の公道、人倫の常経さつきの槍《やり》ヶ岳《たけ》が、「こゝまでおいで。」といふやうに、「なんといふ貝だらう。」といつて、みんなで、いろ貝の名前を思ひ出してみましたが、「先生に聞きに行きませう。」と、花子さんは、その貝をもつて、先生のところへ走つて行きました。「おめでたう。」「おめでたう。」と、互に言葉をかはしながら…… 父と、母と、兄と、姉と、私との五人で、父と母と兄と姉と私との五人で、父も、母も、兄も、姉も、父も母も兄も姉も一二三五一、二四、五六七、八九〇一二三四五六七八九〇
(3) ナカテン	・	ナカテンは、単語の並列の間にうつ（例１２）。たゞし、右のナカテンの代りにテンをうつこともある（例３）。テンとナカテンとを併用して、その対照的効果をねらふことがある（例４）。主格の動詞「が」を省略した場合には、ナカテンでなくテンをうつ（例５）。熟語的語句を成す場合にはナカテンをうたないのが普通である（例６７）。小数点に用ひる（例８）。年月日の言ひ表はしに用ひる（例９ 10）。外来語のくぎりに用ひる（例11）。外国人名のくぎりに用ひる（例12）。〔附記〕外国人名の並列にはテンを用ひる（例13）。	まつ・すぎ・ひのき・けやきなど、むら雲・おぼろ雲は、卷雲や薄雲・いわし雲などよりも低く、まつ、すぎ、ひのき、けやきなど、明日、東京を立つて、静岡、浜松、名古屋、大阪・京都・神戸、岡山、広島を六日の予定で見て来ます。米、英・仏と協商【新聞の見出し例】英仏両国英独仏三国十三・五昭和二一・三・十八二・二六事件テーブル・スピーチアブラハム・リンカーンジョージ・ワシントン、アブラハム・リンカーン
(4) ナカセン	──	ナカセンは話頭をかはすときに用いる（例１）。語句を言ひさして余韻《ゐん》をもたせる場合に用いる（例２）。カギでかこむほどでもない語句を地の文と分ける場合に用ひる（例３）。時間的・空間的な経過をあらはす（例４５）。時間的・空間的に「乃至」または「より──まで」の意味をあらはす（例６７）。かるく「すなはち」の意味をあらはす（例８９）。補助的説明の語句を文中にはさんで、カッコでかこむよりも地の文に近く取り扱ひたい場合に用ひる（例10 11）。ニホンナカセン（=）を短いくぎりに用ひることがある（例12）。	「それはね、──いや─、もう止しませう。」「まあ、ほんとうにおかはいさうに、──」これではならない──といつて起ちあがつたのがかれであつた。五分──十分──十五分汽車は、静岡──浜松──名古屋──京都と、嵐の夜の闇《やみ》をついて走つてゆく。そのきゝめは、少くとも三─五週間の後でなくてはあらわれません。上野─新橋、渋谷─築地、新宿─日比谷の電車、終夜運転この海の中を流れる大きな河──黒潮は、心持──心理学の用語によれば情緒とか気分とか状態意識とかいふのであるが、ふと、荒城の月の歌ごゑが──あの寄宿舎の窓からもれてくるのであらう──すゞしい夜風に乗つて聞えてくる。方法論──それは一種の比較的形態学である──は、（東京・富田幸平＝教員）
(5) テンテンテンセン	…… … ………	テンテンは、ナカセンと同じく、話頭をかはすときや言いさしてやめる場合などに用いる（例１２）。テンテンは引用文の省略（上略・中略・下略）を示す（例３）。テンセンは会話で無言を示す（例４）。テンセンはつなぎに用ひる（例５）。	「それからね、……いやいや、もうなんにも申し上げますまい。」「それもさうだけれど。……」そこで上述のごとき結果になるのである。…… 「ごめんネ、健ちゃん。」「…………」第一章序説…………一頁
(6) カギフタヘカギ	「」『』	カギは、対話・引用語・題目、その他、特に他の文と分けたいと思ふ語句に用ひる（例１２３４）。これにフタヘカギを用ひることもある。カギの中にさらにカギを用ひたい場合は、フタヘカギを用ひる（例５）。カギの代りにを用ひることがある（例６）。をノノカギと呼ぶ。	「お早う。」俳句で「雲の峰」といふのも、この入道雲です。国歌「君が代」この類の語には「牛耳る」「テクる」「サボる」などがある。「さつきお出かけの途中、『なにかめづらしい本はないか。』とお立寄りくださいました。」これが雜誌日本の生命である。
(7) カッコヨコガッコ	（）（）	カッコは注釈的語句をかこむ（例１）。編集上の注意書きや署名などをかこむ（例２）。ヨコガッコは箇条書きの場合、その番号をかこむ（例３）。〔附記〕なほ各種のカッコを適当に用いる。その呼び名を下に掲げる。	広日本文典（明治三十年刊）（その一）（第二回）（承前）（続き）（完）（終）（未完）（続く）（山田）（一）（イ）（ａ） (( ))フタヘガッコ〔〕ソデガッコ［］カクガッコ【】カメノコガッコ
(8) ツナギツナギテン	= -	ツナギは、かな文の分ち書きで、一語が二行にまたがる場合に用ひる（例１）。ツナギテンは、数字上「より──まで」の意味に用いる（例２）。	サルハトウトウジ= ブンガワルカッタ= トアヤマリマシタ。一三五-六頁一五六-八頁三五九-六〇頁五九九-六〇〇頁
(9) ワキテン	、、、	ワキテンは、原則として、特に読者の注意を求める語句にうつ（例１）。観念語をかなで書いた場合にうつ（例２３）。俗語や方言などを特に用ひる場合にうつ（例４）。	ここにも一人の路傍の石《、、、、》がある。着物もあげ《、、》によつて兄にも弟にも使える。ひる《、、》といふ言葉は、元来はよる《、、》に対して用ひたものであるが、おひる《、、、》といつて昼飯のことを意味するようになつたのは、ぴん《、、》からきり《、、》まである
(10)ワキセン	＿＿＿	ワキセンはほとんどワキテンと同じ目的で用ひる（例１）。説明上、ある語句を一つにくるめて表示する場合に用ひる（例２）。	次の傍線を引いた語について説明せよ。さう考へられる。名辞は、単一の名詞から成ることもあり、あるひは長い名詞句から成ることもある。人はパンのみにて生くるものにあらず。
(11) 疑問符	？	疑問符は、原則として普通の文には用ひない。たゞし必要に応じて疑問の口調を示す場合に用ひる（例１）。質問や反問の言葉調子の時に用ひる（例２）。漫画などで無言で疑問の意をあらはす時に用ひる（例略）。	「えゝ？なんですつて？」「さういたしますと、やがて龍《りう》宮へお著きになるでせう。」「龍宮へ？」
(12) 感嘆符	！	感嘆符も普通の文には原則として用ひない。たゞし、必要に応じて感動の気持をあらはした場合に用いる（例１）。強め、驚き、皮肉などの口調をあらはした場合に用いる（例２）。	「ちがふ、ちがふ、ちがふぞ！」放送のとき、しきりに紹介の「さん」づけを止して「し」にしてくれといふので、よくきいてみると、なんと、それは「氏」ではなくて「師」であつた！

（二）主として横書きに用ひるもの
呼び名	符号	準則	用例
ピリオド（トメテン終止符大くぎり）コンマ（小《こ》くぎり）コロン（カサネテン中の大くぎり）セミコロン（テンコンマ中の小くぎり）	．，：；	ピリオドは、ローマ字文では終止符として用ひるが、横書きの漢字交じりかな文では、普通には、ピリオドの代りにマルをうつ（例１２）。テン又はナカテンの代りに、コンマ又はセミコロンを適當に用ひる（例３４５６）。三、引用符・ハイフンの用例は略す。半ガッコの用例は下欄で実地に示した。	1) 春が来た。 2) 出た，出た，月が。 3) まつ・すぎ・ひのき・けやきなど， 4) まつ，すぎ，ひのき，けやきなど， 5) 明日，東京を立って，静岡，浜松，名古屋，大阪・京都・神戸，岡山，広島を六日の予定で見て来ます。 6) 静岡；浜松；名古屋；大阪，京都，神戸；岡山；広島を

呼び名	符号	準則	用例
(1) マル	。	マルは文の終止にうつ。正序（例１）倒置（例２）述語省略（例３）など、その他、すべて文の終止にうつ。「」（カギ）の中でも文の終止にはうつ（例４）。引用語にはうたない（例５）。引用語の内容が文の形式をなしてゐても簡単なものにはうたない（例６）。文の終止で、カッコをへだてゝうつことがある（例７）。付記的な一節を全部カッコでかこむ場合には、もちろんその中にマルが入る（例８）。	春が来た。出た、出た、月が。どうぞ、こちらへ。「どちらへ。」「上野まで。」これが有名な「月光の曲」です。「気をつけ」の姿勢でジーッと注目する。このことは、すでに第三章で説明した（57頁参照）。それには応永三年云々の識語がある。（この識語のことについては後に詳しく述べる。）
(2) テン	、	テンは、第一の原則として文の中止にうつ（例１）。終止の形をとつてゐても、その文意が続く場合にはテンをうつ（例２３）。たゞし、他のテンとのつり合ひ上、この場合にマルをうつこともある（例４）。〔附記〕この項のテンは、言はゞ終止符ともいふべきものであるから、将来、特別の符号（例へば「《シロテン》」のごときもの）が広く行はれるやうになることは望ましい。用例の〔参照一〕は本則によるもの。また〔参照二〕は「《シロテン》」を使つてみたもの。テンは、第二の原則として、副詞的語句の前後にうつ（例５６７）。その上で、口調の上から不必要のものを消すのである（例５における_（、）のごときもの）。〔附記〕この項の趣旨は、テンではさんだ語句を飛ばして読んでみても、一応、文脈が通るやうにうつのである。これがテンの打ち方における最も重要な、一ばん多く使はれる原則であつて、この原則の範囲内で、それぞれの文に従ひ適当に調節するのである（例８９ 10 11）。なほ、接続詞、感嘆詞、また、呼びかけや返事の「はい」「いゝえ」など、すべて副詞的語句の中に入る（例12 13 14 15 16 17 18）。形容詞的語句が重なる場合にも、前項の原則に準じてテンをうつ（例19 20）。右の場合、第一の形容詞的語句の下だけにうつてよいことがある（例21 22）。語なり、意味なりが付着して、読み誤る恐れがある場合にうつ（例23 24 25 26）。テンは読みの間《ま》をあらはす（例26 参照 27）。提示した語の下にうつ（例28 29）。ナカテンと同じ役目に用ひるが（例30）、特にテンでなくては、かへつて読み誤り易い場合がある（例31）。対話または引用文のカギの前にうつ（例32）。対話または引用文の後を「と」で受けて、その下にテンをうつのに二つの場合がある（例33 34 35）。「といつて、」「と思つて、」などの「と」にはうたない。「と、花子さんは」といふやうに、その「と」の下に主格や、または他の語が来る場合にはうつのである。並列の「と」「も」をともなつて主語が重なる場合には原則としてうつが、必要でない限りは省略する（例36 37 38 39）。数字の位取りにうつ（例40 41 42）。〔附記〕現行の簿記法では例40 41のごとくうつが、わが国の計数法によれば、例41は42のごとくうつのが自然である。	父も喜び、母も喜んだ。父も喜んだ、母も喜んだ。クリモキマシタ、ハチモキマシタ、ウスモキマシタ。この真心が天に通じ、人の心をも動かしたのであらう。彼の事業はやうやく村人の間に理解されはじめた。〔参照一〕この真心が天に通じ、人の心をも動かしたのであらう。彼の事業は…… 〔参照二〕この真心が天に通じ、人の心をも動かしたのであらう彼の事業は…… 昨夜、帰宅以来、お尋ねの件について_（、）当時の日誌を調べて見ましたところ、やはり_（、）そのとき申し上げた通りでありました。お寺の小僧になつて間もない頃、ある日、をしやうさんから大そうしかられました。ワタクシハ、オニガシマヘ、オニタイジニイキマスカラ、私は反対です。私は、反対です。しかし私は、しかし、私は…… 今、一例として、次の事実を報告する。また、私は…… たゞ、例外として、たゞし、汽車区間を除く。おや、いらつしゃい。坊や、お出で。はい、さうです。くじやくは、長い、美しい尾をあふぎのようにひろげました。静かな、明るい、高原の春です。まだ火のよく通らない、生のでんぷん粒のあるくず湯を飲んで、村はづれにある、うち雜木山を開墾しはじめてから、彈き終わつて、ベートーベンは、つと立ちあがつた。よく晴れた夜、空を仰ぐと、実はその、外でもありませんが、「かん、かん、かん。」「かん。」秋祭、それは村人にとつて最も楽しい日です。香具《かぐ》山・畝火《うねび》山・耳梨《みゝなし》山、これを大和の三山といふ。まつ、すぎ、ひのき、けやきなど天地の公道、人倫の常経さつきの槍《やり》ヶ岳《たけ》が、「こゝまでおいで。」といふやうに、「なんといふ貝だらう。」といつて、みんなで、いろ貝の名前を思ひ出してみましたが、「先生に聞きに行きませう。」と、花子さんは、その貝をもつて、先生のところへ走つて行きました。「おめでたう。」「おめでたう。」と、互に言葉をかはしながら…… 父と、母と、兄と、姉と、私との五人で、父と母と兄と姉と私との五人で、父も、母も、兄も、姉も、父も母も兄も姉も一二三五一、二四、五六七、八九〇一二三四五六七八九〇
(3) ナカテン	・	ナカテンは、単語の並列の間にうつ（例１２）。たゞし、右のナカテンの代りにテンをうつこともある（例３）。テンとナカテンとを併用して、その対照的効果をねらふことがある（例４）。主格の動詞「が」を省略した場合には、ナカテンでなくテンをうつ（例５）。熟語的語句を成す場合にはナカテンをうたないのが普通である（例６７）。小数点に用ひる（例８）。年月日の言ひ表はしに用ひる（例９ 10）。外来語のくぎりに用ひる（例11）。外国人名のくぎりに用ひる（例12）。〔附記〕外国人名の並列にはテンを用ひる（例13）。	まつ・すぎ・ひのき・けやきなど、むら雲・おぼろ雲は、卷雲や薄雲・いわし雲などよりも低く、まつ、すぎ、ひのき、けやきなど、明日、東京を立つて、静岡、浜松、名古屋、大阪・京都・神戸、岡山、広島を六日の予定で見て来ます。米、英・仏と協商【新聞の見出し例】英仏両国英独仏三国十三・五昭和二一・三・十八二・二六事件テーブル・スピーチアブラハム・リンカーンジョージ・ワシントン、アブラハム・リンカーン
(4) ナカセン	──	ナカセンは話頭をかはすときに用いる（例１）。語句を言ひさして余韻《ゐん》をもたせる場合に用いる（例２）。カギでかこむほどでもない語句を地の文と分ける場合に用ひる（例３）。時間的・空間的な経過をあらはす（例４５）。時間的・空間的に「乃至」または「より──まで」の意味をあらはす（例６７）。かるく「すなはち」の意味をあらはす（例８９）。補助的説明の語句を文中にはさんで、カッコでかこむよりも地の文に近く取り扱ひたい場合に用ひる（例10 11）。ニホンナカセン（=）を短いくぎりに用ひることがある（例12）。	「それはね、──いや─、もう止しませう。」「まあ、ほんとうにおかはいさうに、──」これではならない──といつて起ちあがつたのがかれであつた。五分──十分──十五分汽車は、静岡──浜松──名古屋──京都と、嵐の夜の闇《やみ》をついて走つてゆく。そのきゝめは、少くとも三─五週間の後でなくてはあらわれません。上野─新橋、渋谷─築地、新宿─日比谷の電車、終夜運転この海の中を流れる大きな河──黒潮は、心持──心理学の用語によれば情緒とか気分とか状態意識とかいふのであるが、ふと、荒城の月の歌ごゑが──あの寄宿舎の窓からもれてくるのであらう──すゞしい夜風に乗つて聞えてくる。方法論──それは一種の比較的形態学である──は、（東京・富田幸平＝教員）
(5) テンテンテンセン	…… … ………	テンテンは、ナカセンと同じく、話頭をかはすときや言いさしてやめる場合などに用いる（例１２）。テンテンは引用文の省略（上略・中略・下略）を示す（例３）。テンセンは会話で無言を示す（例４）。テンセンはつなぎに用ひる（例５）。	「それからね、……いやいや、もうなんにも申し上げますまい。」「それもさうだけれど。……」そこで上述のごとき結果になるのである。…… 「ごめんネ、健ちゃん。」「…………」第一章序説…………一頁
(6) カギフタヘカギ	「」『』	カギは、対話・引用語・題目、その他、特に他の文と分けたいと思ふ語句に用ひる（例１２３４）。これにフタヘカギを用ひることもある。カギの中にさらにカギを用ひたい場合は、フタヘカギを用ひる（例５）。カギの代りにを用ひることがある（例６）。をノノカギと呼ぶ。	「お早う。」俳句で「雲の峰」といふのも、この入道雲です。国歌「君が代」この類の語には「牛耳る」「テクる」「サボる」などがある。「さつきお出かけの途中、『なにかめづらしい本はないか。』とお立寄りくださいました。」これが雜誌日本の生命である。
(7) カッコヨコガッコ	（）（）	カッコは注釈的語句をかこむ（例１）。編集上の注意書きや署名などをかこむ（例２）。ヨコガッコは箇条書きの場合、その番号をかこむ（例３）。〔附記〕なほ各種のカッコを適当に用いる。その呼び名を下に掲げる。	広日本文典（明治三十年刊）（その一）（第二回）（承前）（続き）（完）（終）（未完）（続く）（山田）（一）（イ）（ａ） (( ))フタヘガッコ〔〕ソデガッコ［］カクガッコ【】カメノコガッコ
(8) ツナギツナギテン	= -	ツナギは、かな文の分ち書きで、一語が二行にまたがる場合に用ひる（例１）。ツナギテンは、数字上「より──まで」の意味に用いる（例２）。	サルハトウトウジ= ブンガワルカッタ= トアヤマリマシタ。一三五-六頁一五六-八頁三五九-六〇頁五九九-六〇〇頁
(9) ワキテン	、、、	ワキテンは、原則として、特に読者の注意を求める語句にうつ（例１）。観念語をかなで書いた場合にうつ（例２３）。俗語や方言などを特に用ひる場合にうつ（例４）。	ここにも一人の路傍の石《、、、、》がある。着物もあげ《、、》によつて兄にも弟にも使える。ひる《、、》といふ言葉は、元来はよる《、、》に対して用ひたものであるが、おひる《、、、》といつて昼飯のことを意味するようになつたのは、ぴん《、、》からきり《、、》まである
(10)ワキセン	＿＿＿	ワキセンはほとんどワキテンと同じ目的で用ひる（例１）。説明上、ある語句を一つにくるめて表示する場合に用ひる（例２）。	次の傍線を引いた語について説明せよ。さう考へられる。名辞は、単一の名詞から成ることもあり、あるひは長い名詞句から成ることもある。人はパンのみにて生くるものにあらず。
(11) 疑問符	？	疑問符は、原則として普通の文には用ひない。たゞし必要に応じて疑問の口調を示す場合に用ひる（例１）。質問や反問の言葉調子の時に用ひる（例２）。漫画などで無言で疑問の意をあらはす時に用ひる（例略）。	「えゝ？なんですつて？」「さういたしますと、やがて龍《りう》宮へお著きになるでせう。」「龍宮へ？」
(12) 感嘆符	！	感嘆符も普通の文には原則として用ひない。たゞし、必要に応じて感動の気持をあらはした場合に用いる（例１）。強め、驚き、皮肉などの口調をあらはした場合に用いる（例２）。	「ちがふ、ちがふ、ちがふぞ！」放送のとき、しきりに紹介の「さん」づけを止して「し」にしてくれといふので、よくきいてみると、なんと、それは「氏」ではなくて「師」であつた！

くぎり符号の使ひ方〔句読法〕（案）

まへがき